1級建築士事務所 もくもくSTUDIO

対談 talk

建て主に聞くもくもくstudio石井啓介 家づくりを楽しむーライフスタイルを大事にした住まい / N夫妻 新しい事業に挑戦する地域をひらくショップづくり/ 港南台タウンカフェ (株)イータウン 斉藤保氏
対談

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石井:

それって、すごく大事だよ。最初・・・Hさんっていったっけ、ボクのスケッチみた時、これはちょっと心してかからないと、というふうに思ったらしいんだよね。単なるフリーハンドの断面なんだけど。本気でやらないとつきあえないなって、いうふうに覚悟してくれたらしいのね。それが、ある程度意気込んで関わってくれたのは、まさに、心意気っていうか、(天井を指差して)あの梁なんてのは、まさにそれなんですよ。元の図面では、ここまで立派な梁を指定は、していない。(笑)

N夫:

丸くは、描いてあったけどね。

石井:

丸くは、描いてあった。(笑)
丸く描くのは、簡単だけど、ここまでの等級のものは、要求してなかった。ところがやっぱり、やってくれるっていうわけだ。ねぇ、ありがたいはなしですよね。その気になってもらわなきゃいけないですからね。現実的な話をすると、建築家は、建て主からある時期、財産を預かっている立場があるんだよね。それを造る人に、設計図だけじゃなくって、造る人がわかる言葉で、趣旨を伝えなきゃいけないっていう大事なことがあるんですよ。それをちゃんとやらないと相手はやる気になってくれない。で、やる気になってくれるような人は、ちゃんと気概があって、「気質(かたぎ)」をもっている。「気質(かたぎ)」があるから、こちらが要求してるもの以上のもの。要するに現場に入ってからいいものを出してくれる。設計図なんてものは、最低これぐらいのものだよっていうものを書くお手紙みたいなものなんだよといつも言ってるんです。だから、そういうふうに、うまく持っていければ・・・ほんとにそういう意味じゃ建物のためになるし、それが一番、建て主のためには、なるわけです。

N夫:

話は、ちょっと前後しますけど、石井君にやってもらうことになって、実際にね、進んでいったときに、最初におもしろいなっと思ったのは、「ストーリーがまだ、浮かばないんだよね。」と、「ストーリー」という言葉をよく口にするわけですよね。あっ、設計する人もなんか「ストーリー」を考えているのかっていうのはね、そりゃ、びっくりしたね。あ、そういうものの考え方をするのかと。やっぱり、家造りも、設計も家の全体像とかそういうのがあって、細かいところが決まっていって、なんかこう、イメージのストーリーというものをね、浮かべながら、設計するんだなっていうのを初めて知って、それは、なんか新鮮でしたね、私には。

斉藤:

あー、確かにそうですね。

N夫:

「これは、ボクのストーリーなんだよ」という、設計図面にそんな「ストーリー」という言い方をするっていうのが、なんかとても新鮮でしたね。

斉藤:

図面じゃないんですよね。そういう意味では。(笑)

N妻:

ロフトに「ハイジの窓」というのが、わたしのこだわりというか、そんなものができたらいいなというのがあったんですよね。で、図面上、立面図を書いた時、「ここの窓は、丸で」と言ったら結構大きい丸になって、既成のものがないってことになったんですよね。そしたら、ここの現場監督をしていたOさんとなんか丸のものを探そうとしてくれて、石井君は、たらいなんかも面白いよねって、いってて、そしたら、Oさんは、サントリーの白州っていうところに工場があるんですけど(山梨県)、丸なら、(樽あそこにあるって!)そう、伐ってはめちゃったら、そういうことも出来るんじゃないかって・・・うちが頼んだわけじゃないんですよ。Oさんっていう方が、自分でお休みの日に白州まで行って、「丸なら、樽は、どうか」っていうのでね・・・。

N夫:

結局、ダメだったんだけど。でも、探しては、くれたんです。

N妻:

そういうことをしてくれる方に巡り会えたって、いうか、探したわけでなくて、たまたま、担当になった方がそういう方だったというのもあるんだけど。
(その樽は、なぜ、だめだったんですか?)。

N夫:

結局、ダメだったんだけど。でも、探しては、くれたんです。

石井:

あれじゃないかな、大きさもそうだし、含有してるっていうか、

N妻:

ああ、いろんなお酒をね。で、じゃ、樽は、だめだけどどうしようって、そしたら、今度、Oさんがうちのために選んでくれた大工さん、棟梁がいるんですけども、その方が、たらいがダメならといって、ぜーんぶ手作りで、窓の厚みっていうかね、丸を造ってくれたんですよね。寸分の狂いもなく「丸」。

私が笑われても「ハイジの窓が欲しいんだ」と。ハイジの絵本の写真を見せて、「こういう窓なんです。」って、三角屋根のスイスの山小屋にーガラスなんか入っていない、もっと奥行きのある、冬になったら藁を詰めて、寒さをしのぐような窓なんだけどー「それが欲しいんです」って言ったら、そのことのためにいろんな人がこう動いてくれるっていうか、実現させてあげようというのも変だけど、なんか、こう可能な方向に向かって、見えないところで、いろんなことをしてくださるんです。で、結果、大きい丸窓が出来て、で、1年、2年経って、スキマがやっぱり空きますよね。そしたら、棟梁また、来て、外から行ってちゃんとどこを直したかわからないくらい、直してくれたんです。だから、それは、ほんとに、Oさんという現場責任者の方もそうだし、その方がうちのために選んでくれた棟梁っていう人もまた、出会いというかねぇ。

N夫:

その棟梁おもしろかったですよ。
石井君の設計だとね、階段の裏は裏板がなくって、裏からみると階段の裏がそのまま、素材っていうか、ビルの地下でいうとパイプが見えているようなもんで、そういう面白さを活かして、板で、隠して張らないという設計だったんですよ。で、あるとき、石井君来たら、板・・・張っちゃってて、裏が見えなくなってたんですね。現場監督のOさんに「ここは板、張らずに、裏がね、荒っぽいのが見えるようにって、そうなってたじゃない」って言ったら、「いやぁ、棟梁が頑固でね。『オラは、裏がみえるような仕事は、したこたねぇ!』って言って張っちゃった。」っていうんですよね。(大笑)

そしたら、石井君も、じゃ、まっいいかってことになっちゃって。(笑)

N妻:

逆に、石井君が立面図を書いてくれたときに、さっきも話に出ましたが、梁をほんの遊び心で、丸にしといたのよね。四角じゃなくて。そしたら、ある日、現場に材料が並んで、(見ると)庭に電信柱が転がっているよって。(笑)

石井:

これ、なにに使うんだよっていうぐらい立派な丸いもの(梁)が、ちゃんと養生してあってね。

ボクは前に、ログハウスとは違うけど、結構、丸太を使ったことがあって、丸太には、丸太の使い方っていうのがあって、やってたんだけど…、ここでは、勢いで、スケッチするときに当然これ丸だよねって描いたんだよ。(笑)この梁は、これで受けて、これで、オーケーみたいな。そんなすごいオーダーじゃなかったんだけど。これはもう、本当に「ありがとう」って。(笑)

N妻:

こんなものどこに使うんだろうって、下に並べていたときには、かなりの太さと長さがあって。

石井:

だから、結構その施工者の職人さんたちの心意気がね・・・

N夫:

みんなが熱くなったんだね。我々も熱かったし、石井君も意気に感ずでね、熱くなってくれたし。
(写真もよく撮られていた)

N妻:

それは、もう撮りまくった。次、翌週に来たときは、そこはもう見えなくなっているかもしれないっていうのもあるから、それは、そんな偉いことじゃない、楽しいから。

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